「競売物件に賃借人がいる場合 ②」競売入札を検討されている方へ

競売物件に賃借人がある場合は、賃借権が買受人に対抗できるかどうかで、法律関係が変わってきます。買受人は、法律上は抵当権者と同じ立場にあるので、買受人に対抗できる賃借権ということは、抵当権者に対抗が出来る賃借権のことと考えることが出来ます。
抵当権者に対抗できない賃借人は、法律上は権原のない不法占有者の立場となります。

・抵当権の設定後に賃借権が発生した場合
 本来、抵当権の設定後に発生した賃借権は、抵当権者(買受人)に対抗できないのですが、抵当権設定後の賃借権が、一切抵当権に対抗できないとすると、賃借人が即退去せざるを得なくなり、保護の必要性が当然でてきます。そこで民法には、
①建物の引き渡し猶予制度
②賃借権の先順位抵当権に優先する同意の登記制度 の2つの場合に、抵当権者(買受人)に対抗できるとしています。

前回は、①建物の引き渡し猶予制度までを解説しましたので、今回はその続きになります。

・短期賃貸借の保護制度
 平成15年の法改正前には、民法上、短期賃貸借の保護の制度がありました。これは担保権と用益権の調整の観点から、当該抵当物件の抵当権の登記後に対抗要件を備えた不動産の賃貸借は、法所定の短期間を超えないものは、抵当権者に対抗できる制度でした。しかし、占有屋等による執行妨害に悪用されることが多くなったため、平成15年の改正により、この制度は廃止され、建物引渡猶予制度が新設されました。

②賃借権の先順位抵当権に優先する同意の登記制度
登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有する全ての者が同意をし、かつ、その同意の登記がある時は、その同意をした抵当権者(買受人)に対抗する事ができます。
本規定が適用される賃貸借は、「賃貸借の登記」がある場合であり、借地借家法等の対抗力の場合は適用されないことに注意が必要です。また、登記は、賃貸借とすべての抵当権者の同意の2種類の登記が必要です。

・賃貸借(賃借権)が抵当権者(買受人)に対抗できる場合
 賃貸借(賃借権)が抵当権者(買受人)に対抗できる場合に、賃貸借関係は、買受人と賃借人間に引き継がれることになります。買受人が賃貸人の地位を賃借人に対抗するためには、目的物件の所有権の登記が必要とされるが、競売物件の場合は、裁判所の嘱託登記がされているのが通常です。ただし以下の注意が必要です。
・前の賃貸人との間で発生した延滞賃料債権は、原則として引き継がれない。
・敷金関係は原則として、引き継がれる。